絵本と音楽からはじまった、親と子のほっとスペース「サンタッタひろば」【前編】

親と子のほっとスペース「サンタッタひろば」と「たんぽっぽひろば」は、1996年に設立した「トーンチャイムとゆかいな仲間たち」からはじまった、西宮市の親子や子育てをサポートする交流拠点です。

2024年8月から2025年3月にかけては、これまでの活動を記念した「おいでよ!サンタッタとたんぽっぽのメモリアル音楽会」の開催が予定されています。絵本や音楽を愛するママたちが集ったことに始まるひろばの歴史を、サンタッタひろば代表の青山純代先生、立ち上げメンバーの一人である神田葉子先生にインタビューを行いました。

――最初に、青山先生と神田先生のご関係について教えてください。

青山     私たちは、娘や息子が上ヶ原小学校に通っていた時のママ友なんです。小学校で子どもたちに絵本や児童書を読んだり紹介したりする「とんがりぼうし」という名前のサークルを1993年に設立し、そこで出会いました。とんがりぼうしは、今でも活動が続いていると聞いています。

――93年の設立というと、95年の阪神大震災という大変な時期もご経験されているということですね。

青山     そうですね。学校も休みになって、その間は活動ができませんでした。でも仮設の校舎が建ってから、吹きさらしの寒い渡り廊下のようなところで本を読んだことを、よく覚えています。子どもたちと心を温められることを、今何かしなければならないという思いに駆られていました。

神田    校舎もなかなか建たないし、大人は家の再建やこれからのことを考えるのに必死で、子どもたちはどうしたらいいのかわからない。そんな時だったので、子どもたちが自然に笑顔になれる、大好きなことが必要だったんです。

青山    そんな時を過ごした仲間たちと、震災から数年が経った頃、なにか楽しいことをやりたいねと話していたら、「私、トーンチャイムを持っているよ」と声を掛けてくれたメンバーがいました。これが現在のひろばに繋がっていく、はじまりです。

――トーンチャイムは、ハンドベルのように手に持って振って鳴らす、パイプ状の楽器ですね。

神田    そうです。だからトーンチャイムは、右手と左手に一つずつ持ったら、それでおしまい。一人では演奏の難しい楽器だからこそ、みんなで「こんなのがあるんだ」「これで何をどうするの?」からスタートすることができました。

青山    とんがりぼうしに来てくれる子どもたちと一緒にトーンチャイムで遊ぶ方法を考え始めた頃、私たちの子どもの担任の先生が転勤されて、幼稚園の園長先生になられました。その先生は、私たちが何か面白そうなことをしていると思ってくださったのでしょうね。園児たちにトーンチャイムを見せて欲しいと言われ、公演を行うことになりました。

神田    最初にトーンチャイムの演奏をして、その後子どもたちに配る準備をしている間に、パネルシアターやエプロンシアターの上演という公演形式。高度なクラシック公演が世の中にいっぱいあるなか、私たちのようなスタイルは珍しかったと思います。

青山    「トーンチャイムとゆかいな仲間たち」のメンバーは6人いて、そのうち3人に、保育園や幼稚園などで先生の経験があったからこそですね。どのようなプログラムを提供すれば子どもたちに楽しんでもらえるのか、たくさんのアイディアをもらいました。

神田    なかなか触る機会のない楽器を1本ずつ持って貰うと、子どもたちが目をキラキラ輝かせてくれて。

青山    公演は口コミで広がって、最盛期は年間で約80公演。午前はここに行って、昼はあっちに行ってというスケジュールで、大阪から神戸まで。車にトーンチャイムを全部積んで、キーボードも一緒に乗せて、エレベーターがない会場の時には3階までかついで上りました。それだけでエピソードが山ほどあります!

親子で満席のトーンチャイム公演

――先生方が奮闘する姿が、目に浮かぶようです。トーンチャイムの公演に始まった活動は、どのように広がっていったのでしょうか。

青山    公演と並行しながら思いついたのが、親子で参加できるクラシックコンサートの企画です。赤ちゃんも子どもも大歓迎、会場で泣いても大丈夫、みんなで楽しめるコンサート。
今でこそ珍しくありませんが、当時そんなイベントはありませんでした。でも、私の子どもたちがピアノを習っていたピアニストの南木千絵さんに企画の話をしたら、「絶対にやりたい」って言ってくださって。甲東ホールで第1回目の子どもコンサートが決まりました。びっくりするような数の申込があって、キャンセル待ちもたくさん。すごい反響でした。

神田    私たちが子育てをしていた時に感じた「こういうものがあったら良かったよね」から始まったのですが、私たちだけじゃなく、みんなが求めていたんだと思いました。

赤ちゃんも子どもも大歓迎、会場で泣いても大丈夫、みんなで楽しめる子どもコンサート

青山    そんな頃に、国が子育て支援にようやく動き始めて、保育園が地域に開かれるという政策がスタートしました。
トーンチャイムとゆかいな仲間たちの一人がとある保育園で子育て支援のスタッフを募集していると教えてくれ、やってみることにしたんです。行ってみたら、もう本当にすごい人! 5~60組くらいの親子さんがいらしていました。みんなが行き場所を求めていること、でも場所が少ないことをここでも実感して、こういった親子さんが地域で繋がれる場所をつくりたいと思うようになったんです。
私はもともと小学校の音楽専科の教師をしていましたが、子育て支援に関する知識は何もありませんでした。でも子育て支援に興味を持っても、勉強するところがほとんどない。子ども情報研究センターのセミナーに行かせていただいたりして何とか学んで、そうしてスタートしたのが、サンタッタひろばです。

神田    同じ世代のお母さんたちが集まって、子どもたちと一緒に笑って、時には愚痴をこぼして、険しい顔で来ても帰る時にはにこにこして帰ってくれる。そんな場所をつくりたいと思っていました。それぞれが抱える大きな問題を私たちが解決することはもちろんできないのですが、少ししんどさを置いて帰ってもらうことができたらいいなって。

青山    自宅のリビングルームでスタートしましたが、これもぎゅうぎゅう。

神田    1グループ10組から12組くらいだったかな? 申込の数が多かったので、どんどんグループが増えました。

インタビュー後編へつづく