絵本と音楽からはじまった、親と子のほっとスペース「サンタッタひろば」【後編】

親と子のほっとスペース「サンタッタひろば」と「たんぽっぽひろば」は、1996年に設立した「トーンチャイムとゆかいな仲間たち」からはじまった、西宮市の親子や子育てをサポートする交流拠点です。

2024年8月から2025年3月にかけては、これまでの活動を記念した「おいでよ!サンタッタとたんぽっぽのメモリアル音楽会」の開催が予定されています。絵本や音楽を愛するママたちが集ったことに始まるひろばの歴史を、サンタッタひろば代表の青山純代先生、立ち上げメンバーの一人である神田葉子先生にインタビューを行いました。

インタビュー前編を読む

――当時のサンタッタひろばではどんなことをされていましたか?

青山    現在のような預かり保育事業はありませんが、基本的には同じです。親子で集まって楽しい遊びを提供したり、みんなでお話しする時間をつくったり、講師の先生に来ていただいて企画をしました。

神田    簡単で美味しくぱっとできるものをみんなで作る、クッキングもありました。関西学院大学の芝生で集まったり、地域の人も一緒に運動会みたいなことをしたり。曜日を変えたり場所を変えたり、その度におもちゃを持って移動して、どんどん広がっていきました。

青山    来てくださる方が増えていったこともあり、2008年にはパセオ甲東の一角にスペースを借りることにしました。現在の場所に移ったのは、2015年です。駅近に引っ越すことになり、じゃあそこにサンタッタひろばをつくろうよって。叶えてくれた家族に感謝しています。振り返ってみると、リビングルームでサンタッタひろばを始めるずっと前から、夫も子どもたちもとても協力でした。

神田    小学生くらいの時から、子どもたちはよく手伝ってくれていましたよね。会場整理をしたり、イスを並べたり。

青山    私も他のメンバーも、家族の支えなしにはやって来れなかったと思います。

現在のサンタッタひろば

――お話を順に伺うと、明確なゴールを描かれてここまで辿り着いたように思います。

神田    でも、こういう風になるなんて、全く思っていませんでしたよ。「こうなったらいいよね」「こういうのいいよね」って言い続けて来ただけなんです。

青山    目標を目指して走って来たということはありませんが、実は30代か40代の頃から、60歳の時にこんな風になっていたらいいなというイメージはありました。もしかしたらそれは、私の中の一つの指針だったかもしれません。
サンタッタひろばを移転した3年後の2018年には、地域子育て支援拠点事業として、『親と子のほっとスペース「たんぽっぽひろば」』を夙川に開設しました。西宮市は、地域子育て支援拠点事業を民間に委託するという動きが大阪や尼崎市などに比べてなかなか始まらなかったので、市の担当課に話をしてから開設まで8年かかりました。私たちもそうですが、「私たちがしないと誰もしてくれない」と始めた様々な民間の動きを国や自治体が認めてくれて、今日に至っているように思います。

西宮市の地域子育て支援拠点事業である、親と子のほっとスペース「たんぽっぽひろば」

――西宮市の子育ての土壌を、先生方が耕されて来たのですね。

青山    いろんな出会いがあって、力をいただいて、楽しかったからここまで続けて来ることができました。理念や目的だけでは、難しかったと思います。

神田    みんな子どもが好きなんですよね。子どもが「あれなんだろう」って思うキラキラした表情、それを感じたくて活動していました。

青山    いまサンタッタひろばを支えてくれているスタッフには、かつてサンタッタひろばに来てくれていたママたちがいるんです。私たちと一緒に過ごしてくれたママたちが、次のステージに立って支えてくれている。支援の輪の循環を、とても嬉しく思っています。

神田    若いスタッフたちが「あの時代があったから今があるんです」って言ってくれて、こんなに嬉しいことはないですね。私たちが大事にしたかったことや、その気持ちを受け継いでくれていることが嬉しくて、誇らしくて、とてもありがたい。自然に伝えながら共有し続けていることが、現在の利用者さんにも届いているといいなと思います。

青山    今のメンバーが素晴らしく引き継いでくれているので、私たちはそろそろ少しずつ引きながら、現場の悩みのサポートに回る時代ですね。

神田    そうですね。私たちはもう、「こうだったらいいな」と実感することは難しいから、何があったら嬉しいのか、助かるのか、最前線の声を拾っていきたいです。

青山    私たちが子育てをしていた頃から、世の中は劇的に変わりました。SNSをはじめ情報が多く溢れているし、子どもを保育園に預けて女性が働くのが主流です。でも、仕事と育児の両立などの現代ならではの課題が生まれた一方で、子育てと自分が向き合う時の喜びや悩みは、私たちの時代と大きく違わない気がしているんです。私たちは、物理的な変化の中での新しい家族の関係を学び吸収しながら、これまでと同じようにママや子どもたちに寄り添っていきたいです。

神田    最近はママだけでなくパパもね! 子育てひろばでパパがママたちと何の壁もなく喋っている姿は、私たちの世代からすると「ほーーーーーー!」って感じです。私たちの頃はずっとママだけで、そのことに疑問を感じることさえなかったから。

青山    2021年に設立25周年を迎え、2026年には30周年。赤ちゃんが25歳まで成長するとても長い時間なのですが、私たちの中ではその長さを感じていません。その時々で一生懸命にやってきたことが、今に繋がっています。

親と子のほっとスペース「サンタッタひろば」
甲東園駅の北側にある、西宮市の親子や地域住民が集える交流スペース。子育ての不安感、負担感、孤立化、地域のつながりの希薄化など、子どもや子育てを取り巻く社会の諸問題に向き合い、子育てを地域で支え応援していく「まち(地域)づくり」の一助となることを目指し、絵本や音楽を結び目に、多くの関わりの中で豊かな関係を培っていくことを目指すアットホームな子育てひろばです。未就園児の預かり事業の他、リトミックや工作などのイベントも行われており、毎月多くの親子が集っています。